Wordで条項番号を自動更新するメンテナンスしやすい契約書をつくる

民法の改正によって、契約書を大きく変更する必要がありました。これを機に、条項号の番号を自動で連番できるように契約書を作り直そうと思いましたが、思った以上に大変でした。後で条文の追加や削除をしないなら、比較的簡単に番号を自動でつけることはできます。しかし、後で条文の追加や削除することを前提にした、メンテナンスしやすい契約書となると結構難しいです。

使用してるWordは、Microsoft365のバージョン2011です。

契約書のタイプ

タイトルの位置

契約書の書き方には、条文のタイトルを上に書くタイプと後に書くタイプがありますが、Wordで条項番号を自動で振る場合は、タイトルを条の後に書く方がメンテナンスが楽だと思います。タイトルを条文の上に書くタイプも作成できますが、項番号が2番から始まるため、項番号がずれやすいです。他で使い回さないなら問題ないですが、最初にひな形を作成し、契約書作成のときに条項を追加削除する場合は、番号ずれの確認と訂正が少し面倒になります。

上にタイトル

(目的)
第1条 甲と乙は~
  2 甲は乙に対し~
(期間)
第2条 期間は~

後にタイトル

第1条(目的)
  1 甲と乙は~
  2 甲は乙に対し~
第2条(期間)
    期間は~

条項号の書き方

一般的な契約書

1,2,3…    (アラビア数字)
1,2,3…    (アラビア数字)
一、二、三… (漢数字)
号の細目イ、ロ、ハ…

(条文のタイトル)
第1条 これは、第1条第1項です。第1項には番号をつけないのが基本です。
(第2条のタイトル)
第2条 これは、第2条第1項です。
2 これは、第2条第2項です。
  一 これは、第2条第2項第1号
  二 号は体言止めが基本
    イ これは、号の細目

メンテナンスが楽な契約書

1,2,3…    (アラビア数字)(半角・全角)
1,2,3…    (アラビア数字)(半角・全角)
(1),(2),(3)… (括弧は全角、数字は半角・全角)
号の細目ア、イ、ウ…

第1条 (条文のタイトル)
  これは、第1条第1項です。第2項がない場合、番号をつけません。
第2条 (第2条のタイトル)
1 これは、第2条第1項です。第2項がある場合、第1項にも番号をつけます。
2 これは、第2条第2項です。
 (1) これは、第2条第2項第1号
 (2) 号は体言止めが基本
     ア これは、号の細目

条と項の番号は、全角でも半角でもメンテナンス性に違いはありません。

号の番号を漢数字にすると、号数が10を超えるような契約書だとレイアウトが崩れやすく読みにくくなるので、号の番号は(アラビア数字)のタイプにしています。
数字を半角にしている場合、括弧を全角にしておかないと号番号だけを抽出できなくなります。(2)のように括弧つきになり、中の番号2だけを抽出できません。これは、号番号を参照するときに、中の番号だけが必要かどうかによって変わります。

号の細目は、イロハでもいいのですが、作成の際に参考にした契約書がアイウだったので、そのままアイウにしています。

条項号の番号の振り方は、後で簡単に変えられるので、最初から厳密に決めなくても大丈夫です。

見出しの設定(最重要)

条項番号を自動で更新させるのに最も重要なのは見出し(アウトラインレベル)の設定です。見出しをきちんと設定しておけば、条項番号やレイアウトを簡単に変更できるようになります。

見出しの付け方(ルール)

条文のタイトル見出し2
第2項がない場合の第1項見出し3
見出し4
見出し5
号の細目見出し6

見出し1を使うと、自動で条項号番号をつける(アウトラインを定義する)ときに、見出し2が見出し1に変換されることがあるので、見出し1は使用していません。また、第2項がない場合の第1項は、本文にするとアウトラインを定義するときに、条番号が割り振られてしまうので、見出し3に設定しています。

ずれることなくアウトラインに番号をつける正しい見出し付け方が、調べてもわからなかったので、仕方なくこのように設定しています。

見出しレベルを細かく設定すれば、数字が1桁の時は全角、2桁の時は半角にすることも可能ですが、メンテナンスしにくくなるので、数字は半角か全角に統一しています。

引用する契約書

著作権的に問題のなさそうな、「国土交通省 賃貸住宅標準契約書」の第3条と第7条をもとに、見出しを設定していきます。最終的には、第3条第7条を第1条第2条に変更します。

(使用目的)
第3条 乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。
(反社会的勢力の排除)
第7条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
 一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
 二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
 三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
 四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
  ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
  イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 乙は、甲の承諾の有無にかかわらず、本物件の全部又は一部につき、反社会的勢力に賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。

出典:国土交通省のホームページ

すべてのスタイルを表示

【ホーム】【スタイル】から、タイトルと条項号に見出しを設定していきます。設定したい見出し番号がない場合は、【表示するスタイル】から、【すべてのスタイル】を選択すると表示されます。

条項号の番号を削除

見出しを設定していきますが、基本的に、条項号の番号は一切入力しません。条項号の番号を削除しながら見出しを順に設定していきます。見出しを設定すると、下のようになります。

レイアウトが自動で変更され少し気持ち悪い感じになりますが、レイアウトは最後に調整します。

印刷レイアウトでの見た目

アウトラインで確認する場合

【表示】から【アウトライン】を選択します。

アウトラインでの見た目

条項号番号の設定

【段落】【アウトライン】【新しいアウトラインの定義】を選択し、条項号の番号を設定していきます。

新しいアウトラインの定義

右側がない場合は、左下の【オプション】をクリックして展開します。

レベルごとにレイアウトを設定(重要)

  • 【フォント】は、すべて設定していません。
  • 【レベルと対応付ける見出しのスタイル】は、すべて【(スタイルなし)】にしています。
  • その他の項目は、以下の表の通りに設定しています。【なし】以外の【番号の種類】はすべて全角にしています。
レベル番号書式番号の種類左インデントからの距離インデントの位置番号に続く空白の扱い
2第1条1,2,3…0mm7.5mmスペース
3なし0mm7.5mmタブ文字
41,2,3…0mm7.5mmタブ文字
5(1)1,2,3…5mm20mmタブ文字
6ア,イ,ウ…20mm30mmタブ文字

注意するポイント

  • フォントは後から一括で変更できますが、フォントとフォントの大きさ等によって、【左インデントからの距離】と【インデントの位置】の数値を変える必要があります。レイアウトにこだわりがあると、結構面倒です。【新しいアウトラインの定義】を設定する前に、文章全体のフォントを変更しておいた方がいいです。今回は、説明のために後で変更しています。
  • サイトによっては、【レベルと対付ける見出しのスタイル】を見出しレベルに対応させるように書いてあります。しかし、見出しのスタイルがデフォルトのまま、見出しのスタイルを対応させるとレイアウトがくずれます。見出しレベルによっては、見出しのスタイルを変更しないと、レイアウトを整えられなくなり、調整にすごく時間がかかります。私は、最初レイアウトがくずれる原因がわからなくて、数日間試行錯誤しながら調整しました。ここは、すごくはまりやすいポイントだと思います。
  • 【レベルと対応付ける見出しのスタイル】を【(スタイルなし)】に設定しても、アウトラインレベルは変更されません。

設定直後の見た目

フォントを設定していないので、見出しのスタイルで太字の所は太字のままです。

設定直後のアウトライン

アウトラインレベルは変更されていません。

フォントの調整

文章をすべて選択し、フォントを【游明朝】【10.5pt】に変更し太字を解除したら、以下のようなレイアウトになります。文頭についている■のマークは、印刷されません。

最後に

第7条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
 一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
 二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
 三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
 四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
  ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
  イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 乙は、甲の承諾の有無にかかわらず、本物件の全部又は一部につき、反社会的勢力に賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。

出典:国土交通省のホームページ

今回引用した契約書の第7条のタイプ、第1項に番号をつけず、かつ、第1項に号がある場合、自動連番すると第2項の番号が3になります。Wordの仕様なのかわかりませんが、アウトラインレベルをしっかり設定しても、自動連番がずれます。このずれを回避するために、契約書の書き方から変えていく必要がありました。契約書の書式がきっちり決められていて変更できないと、この番号ずれをチェックしていく必要があります。

条項を追加する場合は、追加した所に対応する見出しを設定し、再度アウトラインの定義を行います。

見出しのスタイルを設定できるなら、最初に見出しのスタイルとアウトラインの定義を設定し、【レベルと対応付ける見出しのスタイル】を見出しレベルに対応させるほうが、早くて綺麗に仕上がります。

参考:フォントのptとmmの関係

1pt = 約0.35mm

1mm = 約2.83pt

8pt2.82mm
10pt3.53mm
10.5pt3.70mm
11pt3.88mm
12pt4.23mm