私のところは大法人ではないので、法人税と消費税の電子申告は義務化されていません。e-Taxで申告する必要はないのですが、電子申告に挑戦してみます。書面申告の方が楽なのに、なぜ電子申告に挑戦するのか?一番の理由は、私自身の老化です。
世の流れが電子申告に向かっているなら、そのうち大法人以外も電子申告が義務化されるかもしれません。それが、10年後か20年後かわかりませんが、いざ義務化されると年齢的にすぐには電子申告に対応できそうにありません。今のうちから電子申告に慣れておきたいのです。今なら電子申告できない場合は、書面申告をしたらいいだけですので。
申告用のe-Taxソフトは、国税庁からダウンロードできます。ただし、このe-Taxソフト、かなり控えめに言って、ものすごくクソです。恐ろしく使いにくいです。
今回、一度e-Taxソフトで法人税の申告書類一式を作成し終えてから、毎年こんな作業をするのは嫌だと思い、財務諸表と勘定科目内訳明細書はcsvファイルで作り直しました。
もくじ
事前準備
- 電子証明書(マイナンバー)の取得
- 利用者識別番号の取得
- e-Taxソフトのダウンロードと設定
予想以上に面倒でした。特にe-Taxソフトの設定。
詳しくは、こちら → https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin.html
e-Taxソフトのここが良い
別表を作成しやすい
e-Taxソフトを使ったら、別表を作成しやすくなりました。今までは、必要な別表(PDF形式)をダウンロードして、PDF編集ソフトで入力して印刷していたのが、e-Taxソフトで簡単に作成できるようになりました。必要な項目に入力していくと自動で計算してくれるので、かなり楽になります。
e-Taxソフトの良い点は、この1点だけです。
e-Taxソフトのここがダメ
e-Taxソフトは、いったい誰をターゲットにして作成したものなのか不明です。大法人は会計事務所や高機能な会計ソフトで電子申告に対応できるので、こんなソフト使わないでしょう。となると、e-Taxソフトを使うのは私のような本当に小さな会社で、なおかつ、自分で申告している会社だけだと思うのですが、そのような会社が使うには使いにくすぎます。
e-Taxソフトを使うには、会計、税務、そして、幅広いパソコンの知識が必要です。対応しているのは、WindowsのみでMacでは使えません。ある程度パソコンを使い慣れていないと、e-Taxソフトの導入段階で挫折しそうです。
書式が統一されていない
csvファイルで作成する場合、日付表示は、財務諸表では西暦表示なのに、勘定科目内訳明細書では元号表示です。
財務諸表では、 YYYY-MM-DD形式 で2021年1月1日の場合、2021-01-01でないとエラーになります。2021-1-1ではダメです。
勘定科目内訳明細書では、令和は5、年月日は1桁でも2桁でもどちらでもOKです。2021年1月1日なら、5,3,1,1でも5,03,01,01でも読み込めます。
はぁ?書式を統一してくれよ。そもそも、日付変換なんてコンピューターの得意分野だろ。元号表示したければ、プログラムで勝手に変換したらいいんじゃないの?なぜ、わざわざ日付変換なんてものに人間が対応して、入力しなければいけないんだ。ソフトの設計がクソすぎるだろ。
財務諸表が使いにくい
貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表は、自分で勘定科目を選択して作成する必要があります。e-Taxソフトで作成する場合、作成方法がものすごくわかりにくいです。独自で勘定科目を設定している場合は、対応していない勘定科目もあります。しかも、問題は、作成方法だけではありません。
財務諸表の作成画面、なぜズーム表示できないのか。
こっちは、老眼でモニターを長時間見続けられないうえに、そんな小さな文字や数字は見えないんだよ。
入力ミスしやすい
会計ソフトにe-Tax対応形式のエクスポート機能が無い場合、財務諸表の入力は、会計ソフトで作成した決算書を転記していく形になります。小さな入力欄に転記していくので、入力ミスしやすいです。しかも、自動で金額を合計してくれないので、入力した値の確認が大変です。合計金額が出ていれば、そこをチェックすれば入力ミスを発見しやすくなるのですが、すべての金額を転記していくので、最後までチェックを入念にする必要があります。しかも、ズーム表示できないから、小さな数字を1つ1つ。
今までは、決算書を印刷するだけだったのに、e-Taxソフトを使うと1つ1つ転記して確認しなければいけません。これが電子申告か?IT化して余計に手間とミスが増えてるんだよ。そっちは税務のプロなんだから、PDFで送った決算書を税務署の方で入力するなり、自動読込するプログラムを作成してくれたらいいんじゃないの?こんなクソみたいなe-Taxソフトの開発に一体いくら使ってるんだ?
個別にエクスポートできない
最初は、作成した帳票をエクスポートできないのかと思っていましたが、一応エクスポート機能はあります。ただ、名称が「切り出し」なんです。何だ、切り出しって。出力、バックアップ、エクスポートとかなら、すぐに分かるのですが。ちなみに、いわゆるインポートは「組み込み」です。
しかも、このエクスポート機能は、別表だけとか勘定科目内訳明細書だけとか、1部分のみのエクスポートはできません。作成した帳票一式か、財務諸表一式です。帳票一式の場合はxtx形式で、財務諸表だけの場合はxbrl形式出力されます。xtx形式ってよくわかってないのですが、e-Taxソフト以外で使えるのでしょうか?
e-Taxソフトで電子申告するメリット
少し長くなってきたので、先に結論を書いておきます。
現状では、e-Taxソフトで書類を作成して、法人税と消費税を電子申告するメリットはありません。
e-Taxソフトは、とても使いにくいです。現在使っている会計ソフトが電子申告に対応しているならまだしも、1からe-Taxソフトで書類を作成するのは、時間がかかりすぎます。決算書から転記する過程でミスをする恐れもあります。
ただ、別表の作成は便利なので、e-Taxソフトで別表だけ作成して印刷し、書面申告するのが一番楽だと思います。
どうしてもe-Taxソフトを使って電子申告したい場合は、財務諸表と勘定科目内訳明細書はcsvファイルで作成した方がいいと思います。csvファイルで作成したら、ExcelのSUM関数で金額の合計も出せるので、入力ミスのチェックが楽になります。また、翌年以降も、csvファイルを元に編集したらいいので、作成する時間が短縮されます。決算書の勘定科目なんて、変更することはほとんどないですし。
何より、あの小さな文字を見続ける必要がなくなり、目に優しいです。
CSVファイルで作成する流れ
- 必要な帳票をcsv形式で作成
- ファイルチェックコーナーでエラーチェック
- e-Taxソフトに組み込み(インポート)
csvファイルの名前は、帳票毎に決められています。ファイル名の命名規則に従っていないファイルはインポートできません。
財務諸表のcsvファイルを作成するために、国税庁がExcelで作成できる標準フォームを用意してくれています。ただし、この標準フォームは、ものすごく使いにくいです。
基本的な使い方は、
- 必要な項目に入力
- 入力した項目が上になるように並べ替え
- 使わない部分を削除
- csv形式で保存
という、これまたクソみたいな仕様です。一般商業だと、596行から必要な項目を探し出して入力し、並べ替え用の番号を設定し、ヘッダー部も含め、大半の使わない部分を削除します。それをcsv形式で保存して、ファイルチェック。最後に空行があればエラーが出るので、テキストエディタで確認して空行を削除するという、無駄しかないような仕様です。
少なくとも、貸借対照表と損益計算書は標準フォームを使わないで作成することをおすすめします。
勘定科目内訳明細書を標準フォームで作成する場合、最後の列(カラム)がすべて空だからと列ごと削除してしまうとエラーが出ます。ファイルチェックでカラムエラーがでる場合は、カラム数があっているかをテキストエディタでチェックします。
CSVファイル作成の注意点
csvファイルを作成する場合、csvファイルをExcelで開いて直接編集しない方がいいです。Excelは、日付表示を自動で変更してしまうので、e-Taxソフトにインポートできなくなります。
財務諸表のcsvファイルでは、日付をYYYY-MM-DD形式にしなければいけないのですが、2021-01-01と入力した日付をExcelで開くと、デフォルト設定では2021/1/1になってしまいます。また、Windowsのコントロールパネルから日付表示をYYYY-MM-DD形式に変更しても、Excelで開くと、2021-1-1に変更されてしまい、インポートできなくなってしまいます。
この日付表示問題への対策方法としては、
- xlsx形式でファイルを作成して、日付部分のセル書式は文字列して編集、完成したらcsv形式で保存する
- テキストエディタでcsvファイルの編集をする
このどちらかが、比較的楽だと思います。
私はテキストエディタで編集する方が楽ですが、テキストエディタで編集する場合はエンコードにも気をつけなければいけません。エンコードはShift JISにする必要があります。UTF8だとe-Taxソフトでインポートできません。
なぜテキストエディタがいいのか
財務諸表をcsvファイルで作成するにあたり、国税庁からダウンロードできる
- 勘定科目コード検索ツール
- 個別検索(貸借対照表)
- 個別検索(損益計算書)
この二つの検索ツールを使うことになるのですが、この検索ツールがこれまた使いにくいんです。
勘定科目コード検索ツールはこちら → https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho4.htm
検索ツールを使う目的は、入力必須項目である、勘定科目に対応した行区分、階層番号、勘定科目コードを調べることです。勘定科目を入力したらコードを表示してくれるのですが、このコード、Excelで編集してると普通のコピペショートカット(Ctrl+C , Ctrl+V)では計算式が入力されてしまいます。
そこで、値だけをペーストするのですが、そのショートカットが
- Ctrl + Alt + V
- V
- Enter
と、3段階必要です。
1つ2つの入力なら、これでもいいのですが、勘定科目は数十か所はあります。それを貸借対照表と損益計算書で検索していくので、ものすごく面倒なうえ、かなり時間がかかります。
テキストエディタで編集すると、この結構な数のコピペを普通のショートカット(Ctrl+C , Ctrl+V)で値だけをペーストできるので、作業時間を大幅に短縮できます。
勘定科目、行区分、階層番号、勘定科目コードの設定をしてしまえば、csvファイルをExcelで開いて xlsx形式 で保存した方が、編集は楽になります。そのときは、日付部分を入力しなおして、セル書式を文字列に変更するのを忘れないように。
財務諸表
財務諸表は、必要な帳票を自分で選択して作成します。
- 貸借対照表:BS
- 損益計算書:PL
- 製造原価報告書:SC
- 個別注記表:NT
- 株主資本等変動計算書:SS
- 社員資本等変動計算書:SE
- 損益金の処分表:SR
財務諸表作成の注意点
ファイル名が決まっている
csvファイルで作成する場合は、ファイル名も決められており、変更する場合はファイル名の命名規則に従って変更しなければいけません。
詳しくは、国税庁e-TaxのHPを参照してください。 → 財務諸表のCSV形式データの作成方法
財務諸表 | 業種 | 設定すべきファイル名 | 個人的につけたファイル名 |
---|---|---|---|
貸借対照表 | 一般商工業 | HOT010_3.0_BS_10.csv | HOT010_3.0_BS_10_2021.csv |
損益計算書 | 一般商工業 | HOT010_3.0_PL_10.csv | HOT010_3.0_PL_10_2021.csv |
株主資本等変動計算書 | HOT010_3.0_SS.csv | HOT010_3.0_SS_2021.csv | |
個別注記表 | HOT010_3.0_NT.csv | HOT010_3.0_NT_2021.csv |
業区分と階層を意識
これは感覚的に慣れていないと難しいかもしれませんが、階層を意識しながら勘定科目を設定する必要があります。階層3の次が階層5とかだとエラーが出ます。また、業区分がT(タイトル)の場合は、金額を入力するとエラーが出ます。
独自項目の設定
csvファイルで財務諸表を作成する場合は、勘定科目コード表にない勘定科目を、ある程度柔軟に設定することができます。ただ、その設定方法がここでは説明できないぐらい、複雑です。
詳しくは、こちらの
- (4) 財務諸表CSV形式データの具体的な作成方法
- 勘定科目コード表に記載のない勘定科目コード等の設定方法(PDF)
を見てください。
帳票のインポート
財務諸表をインポートできるのは1度だけのようです。まずは貸借対照表をインポートして、その後損益計算書をインポートする、ということはできません。必要な帳票をすべて作成してから、一括インポートする必要があります。csvファイルだと、インポート後に帳票を追加することはできないという、これまたクソな仕様です。
これで何が困るかというと、財務諸表で必要な帳票は、すべてをe-Taxソフトで作成するか、すべてをcsvファイルで作成するか、このどちらかしかできないのです。個別注記表だけe-Taxソフトで作成するというようなことはできません。
また、e-Taxソフトで財務諸表を作成する場合、以下3点の選択を間違えないようにしてください。
- 株主資本等変動計算書
- 社員資本等変動計算書
- 損益金の処分表
これ、間違って選択すると後から変更できません。貸借対照表や損益計算書を作成してから、間違いに気づくとすべて作り直すことになります。ものすごいトラップ仕様です。
一応、作り直さなくても追加送信で対応できそうですが、財務諸表をインポートできるのは1度だけなので、作成した財務諸表を使い回す場合は、翌年以降も追加送信することになるのでしょうか?ここらはどうすればいいのかよくわかっていません。
財務諸表は、csvファイルで作成することを強く勧めます
ファイル階層のイメージ
こんな感じで、作成した財務諸表フォルダに必要なcsvファイルをすべて入れて、フォルダごとインポートします。
財務諸表
├── HOT010_3.0_BS_10.csv
├── HOT010_3.0_PL_10.csv
├── HOT010_3.0_SS.csv
└── HOT010_3.0_NT.csv
サンプルCSV
貸借対照表サンプル
貸借対照表:5カラム
このcsvファイルをe-Taxソフトでインポートするとこんな感じです。
損益計算書サンプル
損益計算書:5カラム
A,PL,,,
B,会社名(全角),,,
C1,2021-01-01,,,
C2,2021-12-31,,,
損益計算書,,,,
営業活動による収益,,T,2,10D100010
売上高,,T,3,10D100020
独自項目,10000,1,4,10D100020-1
手数料収入,10000,1,4,10D100330
売上高合計,20000,1,4,10D100030
(以下略)
このcsvファイルをe-Taxソフトでインポートするとこんな感じです。
勘定科目内訳明細書
ファイル名も決められており、変更する場合はファイル名の命名規則に従って変更しなければいけません。
詳しくは、国税庁e-TaxのHPを参照してください。 ↓
勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)のCSV形式データの作成方法
標準フォーム
勘定科目内訳明細書の標準フォームはこちら → https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/csv_jyoho2.htm
勘定科目内訳明細書は、標準フォームで作成した方が楽かもしれません。
1からcsvファイルを作成すると、内訳書ごとにカラム数など書式が違うため、1つ1つ調べていくのが面倒です。勘定科目内訳明細書の標準フォームも、必要な項目を入力し、 ヘッダー部を削除してcsv形式で保存というクソな仕様ですが、自分で設定する項目がないので比較的楽です。
勘定科目内訳明細書は、財務諸表と違い、帳票ごとに個別にインポートできます。
勘定科目内訳明細書 | 設定すべきファイル名 | 個人的につけたファイル名 |
---|---|---|
預貯金等の内訳書 | HOI010_4.0.csv | HOI010_4.0_2021預貯金.csv |
受取手形の内訳書 | HOI020_3.0.csv | HOI020_3.0_2021受取手形.csv |
売掛金(未収入金)の内訳書 | HOI030_3.0.csv | HOI030_3.0_2021売掛金.csv |
仮払金(前渡金)の内訳書、貸付金及び受取利息の内訳書 | HOI040_3.0.csv | HOI040_3.0_2021仮払金.csv |
棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書 | HOI050_4.0.csv | HOI050_4.0_2021棚卸資産.csv |
有価証券の内訳書 | HOI060_4.0.csv | HOI060_4.0_2021有価証券.csv |
固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書 | HOI070_4.0.csv | HOI070_4.0_2021固定資産.csv |
支払手形の内訳書 | HOI080_3.0.csv | HOI080_3.0_2021支払手形.csv |
買掛金(未払金・未払費用)の内訳書 | HOI090_4.0.csv | HOI090_4.0_2021買掛金.csv |
仮受金(前受金・預り金)の内訳書、源泉所得税預り金の内訳 | HOI100_5.0.csv | HOI100_5.0_2021仮受金.csv |
借入金及び支払利子の内訳書 | HOI110_3.0.csv | HOI110_3.0_2021借入金.csv |
土地の売上高等の内訳書 | HOI120_4.0.csv | HOI120_4.0_2021土地の売上.csv |
売上高等の事業所別内訳書 | HOI130_5.0.csv | HOI130_5.0_2021売上事業所別.csv |
役員報酬手当等及び人件費の内訳書 | HOI141_5.0.csv | HOI141_5.0_2021役員報酬.csv |
地代家賃等の内訳書、工業所有権等の使用料の内訳書 | HOI150_3.0.csv | HOI150_3.0_2021地代家賃.csv |
雑益、雑損失等の内訳書 | HOI160_3.0.csv | HOI160_3.0_2021雑益雑損.csv |
消費税
消費税は、使っている会計ソフト(会計王)が電子申告に対応しており、クリックするだけでe-Taxソフトにインポートできたので、今回はe-Taxソフトで作成していません。
結論
電子申告が義務化されていないうちは、
e-Taxソフトで書類を作成して、法人税と消費税を電子申告するメリットはありません。
電子申告自体は、会社によってはメリットはあると思います。どうしても電子申告をしたいなら、電子申告に対応している会計ソフトを使う方がいいと思います。e-Taxソフトは、ものすごく手間がかかるうえに、ミスを誘発するような仕様です。
ただし、別表の作成はe-Taxソフトを使った方が簡単です。
私は、今回e-Taxソフトでの作成とcsvファイルインポート、2つの方法で法人税の申告書類一式を完成させましたが、実際に電子申告するかどうかは迷っています。提出先の税務署が近いので、書面申告でもそれほど手間はかかりません。それよりも、入力ミスや書類不備で税務署から問い合わせがある方が嫌だからです。何もしてなくても、税務署から連絡があるといい気はしないものです。
申告期限はまだ先なので、もう少し考えてから、電子申告にするか、今まで通り書面申告にするかを決めたいと思います。